実験生物
当研究室で取り扱う実験生物について紹介します。
食虫植物
革新的形質進化・収斂進化・転用進化・表現型可塑性…食虫植物は、こういった現象を研究するのに適した性質を 数多く備えています。 必要に応じて様々な系統を取り扱いながら、進化の謎に迫っています。
ゲノム・トランスクリプトーム情報の取得はほぼすべての食虫植物系統で進めていますが、特に重要な種について以下に紹介します。
フクロユキノシタ(Cephalotus follicularis)
オーストラリア南西部にのみ自生する一科一属一種の食虫植物で、落とし穴式に小昆虫を捕らえます。この種は顕著な表現型可塑性を示し、生育環境に応じて、袋型捕虫葉と光合成葉を作り分けます。捕虫葉の進化が常に光合成葉から始まっていることを考えれば、この植物には祖先と子孫の形質が同居しているようなもので、これは進化の研究にとても都合のよい性質です。
ウツボカズラ(Nepenthes spp.)
天涯孤独なフクロユキノシタとは対象的に、ウツボカズラ属は200種に迫る種数を誇り、今もなお新種記載が続いています。食虫性のほかに、植物では比較的珍しい雌雄異株性を持っていたり、太古の倍数化に由来する十倍体のゲノム構造を維持しているなど、興味深い特徴を多数持っています。また、袋型捕虫葉を作ることから、フクロユキノシタと併せて収斂進化を探るよいモデルになります。
ブロッキニア(Brocchinia reducta)
パイナップル科に属し、地球上で最も若い食虫植物だと考えられています。食虫植物の初期進化を研究するのに好適な材料です。
トリフィオフィルムとその近縁種(Triphyophyllum peltatum and its relatives)
トリフィオフィルムは西アフリカ原産の食虫植物です。激レアで市場にはほとんど流通していません。一属一種で表現型可塑性を示し、幼若個体が雨季にのみトリモチ式捕虫葉を作ることから「パートタイム食虫植物」とよばれています。それ自体も面白い性質なのですが、近縁のディオンコフィルム(Dioncophyllum)やツクバネカズラ(Ancistrocladus)は食虫性を完全に喪失していると考えられており、これらの種の比較から食虫植物の退化について探ることができます。この系統の食虫植物は栽培技術も確立されていないため、それに長けたヴュルツブルク大学植物園と共同で研究を進めています。
シロイヌナズナなどのモデル植物
食虫植物ばかり見ていては進化の真髄には手が届きません。比較は科学の根幹であり、食虫植物との対比のために、シロイヌナズナやトマトといったモデル植物を取り扱っています。
大腸菌
分子生物学の基礎を支えるバクテリアです。遺伝子配列を単離したり、組み換えたり、増幅したり、発現させたり、その機能を解析するための頼もしい相棒になります。
アグロバクテリウム
植物細胞へDNAを運び、そのゲノムに組み込むスーパーパワーをもった土壌細菌です。植物の性質を改変するのになくてはならない存在です。
新しい実験生物
研究上の興味が合致すれば、新しい生物をこのリストに加えることも可能です。詳しくはメンバー募集のページをご覧ください。